vsolj-news 377: Nova in Vulpecula (TCP J20210770+2914093)
VSOLJニュース(377) 板垣さんがこぎつね座に新星を発見 著者:前原裕之(国立天文台) 連絡先:hiroyuki.maehara@nao.ac.jp 7月16日にこぎつね座の中に12等級の新たな新星が発見されました。この新星 を発見したのは、山形県山形市の板垣公一(いたがきこういち)さんです。板垣 さんは7月16.475日(世界時; 以下同様)に、焦点距離180mmのレンズとCCDカメラ を用いて撮影した画像から、こぎつね座の中に12.0等の新天体を発見しました。 この天体は板垣さんご自身によって口径50cm望遠鏡で確認された他、なよろ市 立天文台や千葉県の清田さんなど多数の観測者によっても確認観測が行なわれ ました。板垣さんの観測によると、この天体の正確な位置は 赤経: 20時 21分 07.70秒 赤緯: +29度 14分 09.3秒 (2000.0年分点) で、発見前日の15日に撮影された画像には、この天体の位置には14.2等よりも 明るい天体は写っていないことから、この天体はわずか1日ほどの間に明るく なった天体であることが分かりました。 この天体の分光観測は7月16.915日にイギリスのR. Leadbeaterさん、17.102日 にイタリアのグループによってそれぞれに行なわれました。それらの結果によ ると、この天体のスペクトルにはP Cygプロファイルを持つ水素のバルマー輝線 の他、一階電離した窒素や中性ヘリウムの輝線がみられること、P Cygプロファ イルの吸収線は輝線に対して秒速1400kmほど青方偏移していることなどが分か りました。このようなスペクトルの特徴から、この天体が古典新星であること が確認されました。 発見後の観測によると、この新星は発見後の7月18-19日ごろには13等ほどまで 暗くなったものの、その後再び明るくなりはじめ、7月23日夜には12等台前半で 観測されました。今後の明るさの変化などが注目されます。 2021年 7月24日 新星の画像 板垣さんによる観測 http://k-itagaki.jp/images/2021-Vul.jpg 新星のスペクトル R. Leadbeaterさんによる観測 https://britastro.org/specdb/data_graph.php?obs_id=10094 VSOLJに報告されたデータよるこの新星の光度曲線 http://kws.cetus-net.org/~maehara/LCGmc.py?object=TCPJ20210770%2B2914093&obs_code=&sdate=&edate=&plot_all=y&plot_vis=y&plot_U=y&plot_B=y&plot_V=y&plot_Rc=y&plot_Ic=y&plot_y=y&plot_Rj=y&plot_Ij=y&plot_C=y&plot_cG=y&plot_c=y&plot_p=y&grid=y 参考文献 CBAT "Transient Object Followup Reports" TCP J20210770+2914093 Munari U., et al., 2021, ATel #14793 ※この「VSOLJニュース」の再転載は自由です。一般掲示、WWWでの公開 等にも自由にお使いください。資料として出版物等に引用される場合には出典 を明示していただけますと幸いです。継続的・迅速な購読をご希望の方は、 VSOLJニュースのメーリングリスト vsolj-news にご加入いただくと便利 です。購読・参加お申し込みは ml-command@cetus-net.org に、本文が subscribe vsolj-news と書かれたメールを送信し、返送される指示に従ってください。 なお、本文内容に対するお問い合わせは、著者の連絡先までお願い致します。 V606 Vulになりました。 |
TCP J2210770+2914093
2021年7月17日 Nova Vul 2021