* フィンレイ彗星がアウトバースト! * |
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W. H. Finlay (Royal Observatory, Cape of Good Hope,
South Africa) discovered this comet with a 7-inch
equatorial on 1886 September 26.83. He described it as
round, one arc minute across, and "very slightly
more condensed towards the centre." He added that
the comet was faint, and about magnitude 11, but
exhibited no tail. He was able to determine
additional positions on September 27.80
and 27.85, which confirmed the object was moving.
12月半ばにバーストを起こし、8.8等まで急増光した (12月19日、Marco Goiato)。その後、10.7等まで減光 した(1月14日、Chris Wyatt)が、1月16日に再びバースト を起こし、7.0等まで急増光した(1月17日、Maik Meyer)。 現在は9.0等の拡散状(1月23日、Maik Meyer)。 日本からは、次第に高く見えるようになる(2014-2015)。 |
天界第一巻九号(大正十年七月号137-141頁)
http://repository.kulib.kyoto-u.ac.jp/dspace/bitstream/2433/159598/1/tnk000009_137.pdf
フィンレイ・佐々木彗星 |
(附、一般に水星軌道について) |
理學士 山 本 一 清 |
一、彗星の軌道 |
(省略) |
二 フィンレイ・佐々木彗星 |
西暦一八八六年(明治十九年)九月二十六日、南 アフリカ喜望峰天文臺のフィンレイ(W.H.Finlay) 氏は、偶然、蛇遣座テ星の南西に光度十一等の一彗 星を發見した。直徑は一分、無尾の星であつたが、 毎日一度半づゝも東へ東へと動いた。此の報知は間 もなく世界の各地に知れわたり、観測が行はれる につれ、軌道要素が續々と發表せらるゝに至つた が、共の結果によつて、先づ學者の胸をうつたこ とは、此の星の軌道要素が、一八四四年にデ・ヴィコ (De Vico)氏の發見した彗星の要素に似てゐる ことであつた。デ・ヴィコ彗星は明かに週期彗星で 初回出現後、五年半毎に、くりかへし出現する筈で 人々が待つたにかゝはらず、何故か遂に再現しなか つた星である。今此の二星の要素を比較して見ると |
フインレイ彗星 | デ・ヴイコ彗星 | ||
(クリュゲル氏計算) | (ブルンノウ氏計算) | ||
近日點進度 | 三一五度五分 | 二七八度四一分 | |
昇交點黄經 | 五二 二九 | 六三 五〇 | |
軌道の傾斜 | 三 一 | 二 五五 | |
近日點距離 | 一・一七 | 一・一八六四 | |
離 心 率 | 〇・七一八一九 | 〇・六一七三七 | |
週 期 | 六・六一七年 | 五・四七年 |
末の桁まで全部一致はむつかしいけれど、大體の 形勢は先づよく合致してゐるから、此の二彗星を全 く同一と見る理由もないではなかつたが、只一つ週 期の差が、どうしても此の二星を同じと見るべく許 されなかつた。何となれば、フィンレイ彗星の近日 點經過は一八八六年十一月二十二日であるが、若し 之れがヴ・ヴィコ彗星の再現であるとするならば、 其の近日點経過は其の年の十一月ではなくて、もつ と早い頃に起るべき筈であつたから、結局、此の二 星は同族のものではあろうが、決して同一のもので はなく、フィンレイ彗星は全然新しい星であると信 ぜられた。 フィンレイ彗星は前後半年程観測されて、其後見 らなくなつたが週期六年八ケ月であるから、次回は 一八九三年の春に再び出現するだろうと、學者逹は 待ち構へたものであるが、果して、同年五月十七日 又もや、フィンレイ氏によつて、水瓶座に發見され た。しかもそれは豫てシュルホフ氏が計算して置い た位置から、一度以内の所であつたとは驚くべきで ある。しかし此の年には、始終、曉天の薄明中に観 測されたのであり、それに星の光度も、やはり十一 等位の微弱さであつたから、僅か三ヶ月餘りの後に は見らなくなつて了つた。 次には一八九九年の末から一九〇〇年の始めに、 彗星は近日点經過をやつた筈であるが、此の時は丁 度、太陽から見て我が地球の反對側にあつたため、 仝く誰にも發見せられなかつた。 其の次は一九〇六年の後半期に出現する筈の見込 みで、シュルホフ氏等は豫め其の彗星の見らるべき 位置の推算表を發表し、大に實際観測家の奮起を促 した結果、同年七月十六日獨逸ハイデルベルヒ大學 天文台のコツブ氏は寫真観測によつて之れを發見し た。今回は星と地球との相互位置が好都合であつた ため、光度も強く、又比較的長い間観測が出来た。 次の近日点通過は、外界に別に何も變りがなけれ ば、一九一三年の始めに行はれる筈であつたが、こ れより先き、一九一〇年頃、此の彗星は木星と著し く接近したことがあるので、其の引力を受けて、軌 道要素は非常な變化をやつたらしい。それに丁度 又此の時には太陽から見て、始終地球の反對側にあ つたため、遂に誰にも發見されなかつた。 故佐々木君によつて發見された今回の彗星は、其 の軌道要素を、以前に三回出現したフィンレイ彗星 と比較して見ると |
第一回出現 | 第二回出現 | 第三回出現 | 佐々木彗星 | 計 算 者 | クリュゲル氏 | シュルホフ氏 | シュルホフ氏 | クロウフオド氏 |
近日點經過 | 一八八六年 | 一八九三年 | 一九〇六年 | 一九一九年 |
十一月二五日 | 七月十二日 | 九月三日 | 十月十五日 | |
近日點進度 | 三一五度五分 | 三一五度三一分 | 三一五度四八分 | 三一八度一五分 |
昇交點黄經 | 五二 二九 | 五二 二七 | 五二 二三 | 四六 五五 |
軌道の傾斜 | 三 一 | 三 二 | 三 三 | 三 二三 |
近日點距離 | 一・一七 | 〇・九八九一 | 〇・九六四九六 | 一・〇一三〇一 |
離 心 率 | 〇・七一八九 | 〇・七一九五〇 | 〇・七二四〇五 | 〇・七一四六三 |
週 期 | 六・六七年 | 六・五五六年 | 六・五四年 | 六・六八八 |
基準春分點 | 一八八六年 | 一八九三年 | 一九〇六年 | 一九一九年 |
發 見 者 | フィンレィ氏 | フィンレイ氏 | コツフ氏 | 佐々木哲夫氏 |
これで見ると、佐々木彗星がフィンレィ彗星の第 四回出現たること、殆んど疑ふべき餘地が無い。 此度の出現は、星と地球との相互位置から言へば 比較的に好都合の場合であつた。距離も近く、従つ て光度も大きかつたに拘はらず、近日點通過後十日 日まで世界中の誰にも發見されなかつたのは不思議 と言はねばならぬ。以前の三回の出現には、皆何れ も近日點通過の約二ヶ月前に既に發見されたのであ るのに。……之れは多分一九一〇年の時、星が木星 に接近したために、軌道要素が餘りよく分らず、そ れに一九一三年の時には見逃して了つたため、今回 の位置推算には頗る不安があつたのに由るだろうだ から、なまじひに推算位置に捕はれるよりも、佐々 木君のやうな熱心家によつて始めて發見されるべき ものであつたのである。(終) |